金曜フリー走行 10月27日(金) 天候:晴れ/路面:ドライ
4月に富士スピードウェイで開幕した2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、8月にモビリティリゾートもてぎで開催された第7戦から2ヶ月以上のインターバルを経て、『JAF Grand Prix』として開催された第8戦・第9戦を迎えた。
docomo business ROOKIEと大嶋和也は今シーズンポイント獲得、予選Q2進出、そして上位争いといった目標を達成してきたが、もちろん目指すのはさらにその先。今季最終大会となるこの第8戦・第9戦で、2024年に向けたさらなる躍進のきっかけを得るべく臨んだ。
舞台となる三重県の鈴鹿サーキットは、すでに今季合同テスト、さらに第3戦の舞台として開催されており、データは十分。その上で、チームと大嶋がさらに上に行くための新たなセットアップをトライすべく、10月27日(金)午後2時からスタートしたフリー走行に出走した。大嶋は晴天のもと2〜4周ほどのピットアウト〜インを繰り返しながら新たなセットアップを確認、調整していった。
「かなり時間もあったのでいろいろなセットアップを用意して、『少しやりすぎかな?』と思いましたが、やらずに後悔するのもイヤだったので」とフリー走行の時間を目一杯使いながら周回を重ねていき、セッション途中にはトップに立つこともあった。
ただこの1時間30分のフリー走行については、他のドライバー同様大嶋も路面コンディションの悪さを感じており、タイムが想定よりも伸び悩むことになった。さらに終盤のアタックシミュレーションではライバルたちに比べて大嶋のタイムが伸び悩み、1分39秒785というベストタイムで15番手で終えることになった。
とはいえ、各車のタイムは僅差でほんのわずかの差でポジションが5〜10は変わる。「グリップ感は感じているので、バランスが整えばポールポジションを狙えるところも見えないこともない」と大嶋は翌日に控えた第8戦の公式予選、そして決勝へ向け手ごたえを少しずつ感じていた。
第8戦 公式予選 10月28日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
わずか一度きりのフリー走行を経て、迎えた10月28日(土)は午前9時30分から第8戦の公式予選がスタートした。この日の鈴鹿サーキットは秋晴れとなったが、前夜のフリー走行の後、サーキットには強い雷雨が降ったことから、前日のコンディション変化の可能性もあった。
そんな公式予選に向けて大嶋は午前9時30分から始まったA組から出走。気温17度/路面温度24度というコンディションのもと、まずはコースインした集団の最後尾からタイヤのウォームアップを進めていく。
大嶋は4周目、アタックラップに入っていこうとするが、ここでまさかの事態が起きてしまった。チェッカーフラッグが出てしまい、大嶋はここで走行終了を示すチェッカーを受けてしまったのだ。必然的にアタックはできず、そのままピットに戻ってしまった。
「集団の先頭にいた車両のペースが遅かったこともありますが、隊列の最後尾につけたのが良くなかったです。安全にいくべきでした」と石浦宏明監督。
タイムは22番手で予選不通過となってしまったが、ピットに戻るまでに、翌日の第9戦も見据えアタックのシミュレーションを行い、しっかりと良い感触は得た。
第8戦 決勝レース 10月28日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
午前に行われた公式予選から4時間ほどを経て、迎えた第8戦の決勝レース。アタックができなかった大嶋は、最後尾から決勝レースを戦うことになった。午前に比べてかなり風が強くなったが、気温21度/路面温度26度というコンディションのもと、午後2時30分にフォーメーションラップが始まった。
22番手からスタートした大嶋だったが、「ぜんぜんタイヤが温まらなくて失敗してしまった」と最後尾から集団を追っていった大嶋は、1周目には#51 ラウル・ハイマンをNISSINブレーキヘアピンでかわし21番手へ。さらに翌周には#55 ジェム・ブリュックバシェを同じくヘアピンでオーバーテイク。20番手に浮上した。
ただ、その後は前を行く集団に行く手を阻まれるかたちとなってしまう。大嶋は予選でもフィーリングは良く、この決勝レースでも好感触を得ており、ペースは大嶋の方が圧倒的に良かった。ただ鈴鹿はいかんせんオーバーテイクがしづらい。やはり予選でアタックできなかったことが悔やまれる展開となってしまったが、それを言っても仕方がない。なんとかその大嶋のペースを活かすべく、チームも戦略を練っていった。
しかし、そんな矢先の5周目に激しいクラッシュが発生してしまった。大嶋の2台前方で17番手を争っていた#64 大津弘樹が、130Rで#36 笹原右京のインを差そうとした際に2台が接触。スピン状態に陥り、激しくクラッシュしてしまった。
特に車体が浮いてしまった#36 笹原の車両はスポンジバリア、さらにデブリフェンスをなぎ倒し、コース外に飛び出してしまっており、笹原の容態が心配されるほどのアクシデントになってしまった。
レースはセーフティカーランとなり、その後すぐに赤旗中断となってしまう。幸い笹原は意識がある状態で救出されたが、デブリフェンスは支柱が曲がってしまっており、すぐに修復することは不可能であるとして、午後3時30分、大会審査委員会はレース終了を宣言することになった。
結果的に、第8戦は3周終了時点での順位で確定することになり、大嶋の順位は19位となった。上位でスタートしていれば、そのままポイント獲得にも繋がった可能性もあったが、こればかりは仕方がない。
とはいえ、大嶋は5周のレースのなかで確実に良いフィーリングを得ていた。これを活かすべく、チームはしっかりと準備を整え、10月29日(日)の決勝レースで今季を良いかたちで終えるべく、改良を進めていった。
第9戦 公式予選 10月29日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ
思うようにレースを戦うことができなかった10月28日(土)の第8戦から一夜明け、迎えた10月29日(日)は第9戦の予選・決勝が行われた。
前日の大きなクラッシュに巻き込まれた2台が出走を見合わせ、20台で争われるレースとなったが、第8戦でアタックができなかった大嶋は、気温17度/路面温度23度というコンディションのもと、午前8時50分から始まった予選Q1のA組に出走した。
大嶋は一度ピットアウト〜インを行った後、前日の反省を踏まえて少々早めにコースイン。ライバルたちとアタックに向けた位置取りを展開していくと、タイムアタックに入っていった。
ただ、大嶋はここで「フィーリングも悪くないしグリップ感も変わらなかったのですが、昨日感触が良かった昨日の決勝セットに引っ張られすぎたかもしれません」とややタイムが伸びず。1分38秒750で結果はA組の10番手。またも苦しいグリッドとなってしまった。
とはいえ、フィーリングとしては悪くない状況は続いている。自信がある決勝セット、そしてチームが得意とする戦略での追い上げを期するべく、午後の決勝レースに向けて準備を進めていくことになった。
第9戦 決勝レース 10月29日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ
快晴のもと、2万5,500人もの観衆が訪れ、賑わいをみせるなか迎えた第9戦の決勝レースは気温20度/路面温度29度というコンディションのもとスタートした。
この日は豊田章男チームオーナーも激励に訪れており、チームの気運も高まるなか、20番手から大嶋は悪くないスタートを切ったものの、イン側のラインで1コーナーに向かうと、その際に前が詰まっており、ポジションアップはならず。しかしオープニングラップでまずは#51 ハイマンをオーバーテイクし、19番手で1周目を終える。さらに大嶋はその後も2周目に#53 大草りきをかわし18番手へ。4周目には#55 ブリュックバシェをかわすなど、序盤から少しずつポジションを上げていった。ただ、第9戦に向けて変更していったセットアップの影響か、タイヤの消耗に対してのタイムの落ち幅が大きい。前日の第8戦では、そのままレースが行われていた場合は決勝ペースの良さを活かし終盤までピットインを引っ張り、チェッカーへ追い上げる作戦を立てていたが、今回の第9戦の様子ではその作戦はうまくいかないように感じられた。
10周が経過し、ピットウインドウがオープンすると、ライバルたちは少しずつピットに向かっていき、大嶋の順位は上がっていく。直接のライバルとなりそうな車両のピットインの状況を見ながら、石浦監督は大嶋のピット作業のタイミングをうかがっていたが、10周目から大嶋の前を走っていた#19 関口雄飛のペースが悪く、大嶋がなかなかペースが上げられない状態が続いていた。そこでタイムロスを避けるべく、15周を終えてチームは大嶋をピットへ呼び戻した。
docomo business ROOKIEは、ここで今週初めてのピット作業を抜群のスピードでこなし、大嶋を送り出す。順位を争いそうだった#53 大草や#19 関口に対してアンダーカットが成功し、大嶋は13番手に浮上。レース終盤に向けてポイントをうかがえる順位までつけた。
ただレース終盤、チームも予想していなかった展開となってしまった。この週末がスーパーフォーミュラでの初めての実戦だった#53 大草が、トップ争いの面々よりも速いペースで大嶋を追い上げてきた。新人にかわされるわけにはいかないと27周目にこれを一度退けるが、大嶋もややペースが苦しく、防戦一方となってしまった。
迎えたファイナルラップ、大嶋はなんとかチェッカーを目指しポジションを守っていたものの、最後には#53 大草にかわされてしまい、14位でフィニッシュすることになった。この週末はフリー走行から感触は悪いものではなかったが、第8戦の公式予選でアタックできなかったことから、歯車が噛み合わない週末となってしまった。
この結果で、2023年のdocomo business ROOKIEの挑戦は幕を閉じることになった。1ポイントも獲得することができなかった2022年に比べ大嶋は今季13ポイントを獲得。ランキングでも14位となった。またチームランキングでも10位に浮上した。
大きな成長を遂げたチームだが、もちろん目指すところはまだまだ先だ。docomo business ROOKIEはオフシーズンのテストから、さらなる成長を目指していく。
DRIVER 大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
「第8戦は序盤前が遅くて、前が開けたらペースを上げられるだろうと楽しみにしていたうちに赤旗でレースが終わってしまいました。第9戦の決勝はスタートはまずまずでしたが、前のクルマに詰まってせっかくのスタートがもったいないことになってしまいました。第8戦ほどのグリップ感が感じられず、フィーリングが違っていましたね。タイヤがフレッシュな状態で攻めきれませんでした。リヤのグリップが不足して少し辛いレースになってしまいましたね。今回、今までとは違うセットアップで持ち込んでいましたが、改善に期待はしつつも、まだまだ解決しきれていませんね。2024年に向けてはルールが変わるということも聞いているので、僕たちのような1台体制のチームにとってはチャンスだと思います。諦めずにまた頑張っていきたいです」
DIRECTOR 石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA
「第8戦ではしっかりと予選ができなかったので、今日はちゃんとアタックできるように話し合ったのですが、前日のデータをもとにセットアップを変えたところ、予選のパフォーマンスが下がってしまったので、思ったようなグリッドになりませんでした。そこは反省点ですね。決勝もタイムの落ちが大きく、当初の作戦を変えざるをえませんでした。今回は少しうまくいかない週末になってしまいましたね。今回はチャレンジしたセットアップでしたが、それを仕上げられなかったと思います。とはいえ、今後もテストが続くので、しっかりとレベルを上げなければ目標には届かないと思っています。今季最初に立てた目標はクリアできていたので、来季に向けて表彰台を目指し、さらなる挑戦を続けていきたいと思います。一年間応援ありがとうございました」