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全日本スーパーフォーミュラ選手権2024 第3戦

フリー走行 6月22日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ

 第2戦オートポリスから約1ヶ月のインターバルを経て、2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は第3戦を迎えた。初夏の一戦となった今回の舞台は、宮城県のスポーツランドSUGO。docomo business ROOKIEと大嶋和也にとって、多くの思い出が残るコースだ。
 2022年、大嶋はこのコースで自身の進退を問う悔しい思いを味わった。逆に2023年は、激しい戦いを繰り広げ、歓喜の4位フィニッシュ。1台体制のなかで苦労を味わい続けたチームメンバーに、喜びの涙が流れたコースでもある。
 そんな2023年の印象が強いせいか、今回の第3戦には否が応でも期待が高まっていた。前戦オートポリスの後、大嶋は「少しハードルが高くなっています(苦笑)」と笑ったが、大嶋自身ももちろん上を目指したい。チームとともに準備を万端に整えスポーツランドSUGOに乗り込んだ。
 迎えた走行初日となった6月22日(土)は、朝から晴天に恵まれ気温もグングン上昇。午前9時10分から行われたフリー走行は、気温28度/路面温度38度というコンディションのもと始まった。
 途中、#6 太田格之進が馬の背コーナーでクラッシュしたことで赤旗中断があったが、そんななか大嶋は4〜6周のショートランを繰り返していった。途中、大嶋のタイムはポンと上位に躍り出ることもあり、戦闘力は間違いなくありそうだった。
 ただ、コクピットの大嶋のフィーリングとしては「いまひとつ」な状況だった。セッション間際のアタックシミュレーションでは1分07秒207を記録し12番手につけてみせたものの、午後の公式予選に向けては改善が必要というフィードバックだった。
 このSUGOはコース長が短いことから、ほんのわずかなタイム差が予選での順位に響いてくる。今季の目標であるQ1突破をなんとしても達成するためにも、午後の予選に向けてチームと大嶋はセットアップのさらなる見直しを図っていった。

公式予選 6月22日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ

 気温31度/路面温度50度という初夏の陽気のなか、午後2時から行われた公式予選。大嶋はQ1のB組に出走した。午前のフリー走行の感触をもとに、大嶋とエンジニアたちは「こうではないか」という予測を立ててセット変更を行ったが、コースインした大嶋はそれがズバリとハマっていることを感じ取った。
 タイヤを温め、6周目にアタックを敢行した大嶋は、ここで1分06秒059という素晴らしいタイムを記録する。結果は2番手! ついに今季の目標であるQ1突破を果たした。B組の首位に0.001秒差だっただけに大嶋は「もったいない」と苦笑いを浮かべたが、それでも速さは間違いなくありそうだった。
 その勢いを駆って、続くQ2では3周目にアタックを実施。1分05秒934を記録し、この結果、大嶋は今季予選最上位の8番手につけてみせた。「たまにポールを獲れそうなクルマができたところで、合わせ込むのは大変ですよ」とQ2のコンディション変化に対応する難しさを語ったが、それでも1台体制でこの結果は快挙。サーキットを訪れた豊田章男オーナーも満足そうな笑顔で大嶋の健闘を讃え、チームの雰囲気も大いに高まった。

決勝レース 6月23日(日) 天候:雨 路面:ウエット

 迎えた6月23日(日)の決勝日。目標のひとつであったQ1突破を達成し、次なる目標はポイント獲得だ。そしてその目標はもちろん大事ではあるが、もうひとつチームは相性が良いSUGOで大嶋に気持ち良くレースを戦ってもらおうという目標があった。
 ただ、そんな上昇気流に水を差すように、この日のスポーツランドSUGOは朝から雨模様となってしまっていた。事前の天気予報でも予想されていたが、午前9時55分からのフリー走行でも雨脚が強い。スーパーフォーミュラで走るには難しいコンディションとなっていた。大嶋は一度ピットアウトしたが、すぐにピットに戻る。
 そんななか、メインストレートでアクアプレーニングに乗り、1台がクラッシュしてしまう。フリー走行は赤旗のまま天候が回復せず終了に。レース前のウォームアップ走行の時間が延長されることになった。
 ただ、その後も天候は回復せず、午後1時30分からのウォームアップも5分間ディレイ。心配された霧はなんとか薄くなったが、開始直後に最終コーナーで#64 山本尚貴がクラッシュ。ガードレールの補修が必要となってしまう。#64 山本のクラッシュは突然水に乗ったかのようにリヤが出てしまうもので、高速の最終コーナーだけにダメージも大きかった。補修は時間を要し、スタートは午後3時35分まで遅れることとなった。
 その間雨脚はやや小康状態になったものの、ウエットコンディションは続いており、レースはセーフティカースタートとなった。6周目、ついにレースがスタートを迎えることになったが、猛然とペースを上げる集団のなかに大嶋の姿がない。
 まさか──。チームメンバーが見つめたモニターのなかに映し出されたのは、最終コーナーでクラッシュしていた大嶋だった。最終コーナーでペースを上げアクセルを踏んだ瞬間に、突如スピン状態に陥ってしまったのだ。
「やっちゃった。ゴメン」と大嶋からは無線が入ったが、#64 山本、さらにその後レース再開後クラッシュした#39 阪口晴南もまったく同じような状況だった。レースをするには厳しい状況だったのは明白で、レースは赤旗中断となった後、再開されず12周の時点での結果で終わりを告げることになってしまった。
 ただ、6周目にクラッシュした大嶋はリタイア。ポイント獲得を目指していただけに悔しい結果ではあったが、それよりも大嶋とチームにとっては、今回思いきり攻めるクルマを手にできたことが大きかった。この速ささえあれば、ドライのレースでポイントはきっと手に届くからだ。
 困難すぎるレースを失った悔しさはあれど、その悔しさは戦える速さがあるからこそ味わえるもの。docomo business ROOKIEは、さらなるステップアップを果たすべく車両を修復し、第4戦富士の直前の合同テストでトライを行っていく。

DRIVER  大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
「クラッシュについては単純にアクセル踏んだら滑っただけでした。今週は昨年結果が良かったSUGOで自信をもってレースウイークに臨みましたし、クルマも走り始めはバランスが悪かったですけど、予選に向けてアジャストすることができましたし、今までにないくらいのパフォーマンスを出すことができました。Q2に向けてコンディション変化など読み切れず、フィーリングが悪化してしまったのは悔しいですが、バランスが整えば上位と同じタイムで走れることが分かったので良かったです。結果は残りませんでしたけど、気持ちとしてはポイントが獲れなかったことより、予選で速く走れたことの方が僕としては大きいです。次戦富士でも方向性のイメージができているので、それを合同テストでチェックして、なんとか良い結果を残したいと思っています」

DIRECTOR 石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA
「レースはレースですから。僕のなかでは、予選までの間にしっかり積み上げていったものを出し切って欲しかったですし、レースは何が起きるか分からない。大嶋選手に気持ち良くレースをしてもらえればと思っていたので、こういう結果も頑張った故なので良いと思っています。それよりも、自分たちとして過去最高の予選ができたことはすごく良かったです。メカニックのみんながすごく細かく準備してくれたし、昨年のSUGOとも違うセットアップをエンジニアたちが考えて持ち込んでくれたのが、すべて予選に向けてマッチングしたので、チームとして良いステップになったと思います。さらに強いチームになったと思いますね。今回、練習を重ねてきたピットストップを披露できなかったのは残念ですが、次戦はさらにもう一段上を目指していきます」