東北のファンに水素エンジンの進化を披露。安定した走りを印象づける
富士スピードウェイで行われた第2 戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24 時間レース』を終え、ORC ROOKIE Racing の『もっといいクルマづくり』への挑戦は東北地方での唯一のレース、スポーツランドSUGO での第3戦『SUGO スーパー耐久3 時間レース』を迎えた。
2021 年のSUGO でのレースはORC ROOKIE Racing GR YARISで参戦していたことから、水素エンジンを積むORC ROOKIE Corolla H2 concept にとっては、東北での初めてのレース。また、今回のレースは3時間レースということもあり、ドライバーラインアップは東北出身の佐々木雅弘に加え、モリゾウ、小倉康宏という3人で挑むことになった。
一方、3戦目のレースを迎えるはずだったORC ROOKIE GR86CNF Concept だが、今回のレースを前に、トヨタ自動車から第2戦までのレースを受けて、車両素性の把握のために欠場の打診があり、ORC ROOKIE Racing はこれを受諾。
残念ながら第3戦は欠場し、第4戦以降の現場でのアジャイルな開発を進めるために、一度立ち止まってさらなる改良を進めることになった。
とはいえ、1台のみの参戦でも、『もっといいクルマづくり』、そしてカーボンニュートラルに向けた『意志ある情熱と行動』の歩みを止めるわけにはいかない。モリゾウは「初めての東北でのレース。注目されると思いますが、皆さんひとりひとりの動き、情熱が注目される。皆さんがヒーローであるという自覚をもって、東北に元気を与えられるようにしましょう」と週末に臨んだ。
専有走行 7月7日(木)〜8日(金) 天候:雨/晴れ 路面:ウエット/ドライ
迎えた第3戦のレースウイークだが、事前の天気予報は雨がちで、難しいコンディションでのレースウイークとなることが予想された。週末が近づくにつれて少しずつ予報は好転していったが、走行初日となる7月7日(木)のSUGOは、午前からポツポツと雨が降り出した。この日は午後0時から25 分間の走行が3回予定されており、ORC ROOKIE Corolla H2 Concept はウエットコンディションのなか、佐々木がステアリングを握りセットアップを進めていく。
この日はモリゾウがスケジュールの都合上サーキット入りできなかったこともあり、小倉康宏の習熟を進めていった。3回目の走行では、雨も止みコンディションも好転している。
明けて7月8日(金)は、午前8時から1時間15 分の専有走行1回目が、午後0時50 分からの専有走行2回目が行われた。前夜からふたたび降り出した雨が残り、午前の専有走行1回目はふたたびウエットに。まずは佐々木が乗り込み確認した後、SUGO 入りしたモリゾウがドライブ。ウエット路面をものともせずラップを重ねた。
専有走行1回目では途中から少しずつコンディションが良化しはじめ、モリゾウはどんどんとタイムを挙げていくと、15 周目に1分41 秒183 というタイムをマーク。その後も給水素をこなしながら、チェッカーまで走りきった。
その後スタートしたグループ1の走行では晴れ間も見えはじめ、専有走行2回目は爽やかな晴天のもと、路面もすっかり乾きドライコンディションで行われた。ORC ROOKIE Corolla H2 Concept はふたたび佐々木がステアリングを握りコースインすると、4周を走りピットイン。モリゾウが待望のドライで走行していく。短いコースながら、佐々木の2秒近くに入るタイムを記録するなど、ペースも上がっていった。
専有走行終盤には、小倉がふたたびORC ROOKIE Corolla H2 Concept に乗り込み、12 周を走行。細かなトラブルはあったものの、大がかりな修復が必要なものはなく、 24 時間レースを乗り越えたORC ROOKIE Corolla H2 Concept の安定感を示し専有走行を締めくくることになった。
公式予選:7月9日(土) 天候:曇り/雨 路面:ドライ/ウエット
迎えた7月9日(土)の予選日は、朝から細かい雨が舞うコンディション。午前8時30 分からのフリー走行はウエットで行われ、モリゾウがステアリングを握り走行。16 周を走り、1分49秒589 というベストタイムをマーク。予選に向け習熟を終えた。
午前こそウエットだったSUGO だが、フリー走行のORC ROOKIE Corolla H2 conceptが走行を終えた後にスタートしたグループ1の走行が行われる頃から雨は止みはじめ、午後0時30分から迎えた公式予選は、まだ細かな雨粒が舞っていたものの、ドライで迎えることになった。まずAドライバー予選に登場した佐々木雅弘は、3周目に1分35 秒818 というベストタイムをマーク。ST-4 クラスから参戦する5台のうち2台には先行されたものの、3台を上回ってみせた。
ただ、佐々木が走行していたAドライバー予選の終盤から、少しずつ雨量が増えはじめてしまう。雨粒が細かく路面がすぐに濡れるわけではなかったが、一時雨は強くなる。しかし、モリゾウが乗り込むBドライバー予選では雨が止むなど、非常に難しいコンディションとなった。ただそんな状況ながら、モリゾウは予選終了まで果敢に攻め、6周目に1分39 秒122 というタイムをマーク。驚くべきタイムだ。
その後も急に雨が降り出したりと不安定な天候となったが、Cドライバーの小倉は走行前の“晴天祈願”が効いたか、少しずつコンディションが好転。スリックでは厳しい状況ではあったが、それでも1分41 秒737 をマークした。
「ドライバーたちもしっかりタイムを記録してくれましたし、平和な予選でしたが、逆に言えばそれも1年を戦っての進化の証かと思います」と片岡龍也監督は予選日を振り返った。
決勝レース 7月10 日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ
7月10 日(日)の決勝日、スポーツランドSUGO はようやく朝から爽やかに晴れ渡った。それとともに気温もグングンと上がり汗ばむ陽気のなか、午前8時45 分から3時間の決勝レースがスタートした。ORC ROOKIE Corolla H2 concept のスタートを務めたのは佐々木だ。東北出身ということもあり、SUGO はホームコース。オープニングラップから、ST-4 クラス車両の間に入りながら、果敢に前を追っていった。ただ2周目、1コーナーにアプローチしたST-5クラスの車両がエンジンブローを喫し、2コーナーにストップ。車両からはオイル漏れがあり、その処理のためにレースはフルコースイエロー(FCY)からセーフティカーランに切り替えられた。
レースは迅速なオイル処理もあり8周目にリスタートを迎え、佐々木はふたたびST-4 クラスの集団に混ざりレースを展開していく。今季参戦を開始し、改良が進んでいくST-4 クラスのGT86勢とは少しずつギャップが広がっていくが、それでもORC ROOKIE Corolla H2 conceptは十分互するスピードをみせ、17 周を終えピットイン。まず一度目の給水素を行った。暑さのな
かでの給水素中、チームは冷気とドリンクを佐々木に渡し、しっかりとクールダウンを行い2スティント連続周回へ送り出した。佐々木は33 周までラップを重ねファーストスティントを終えると、ORC ROOKIE Corolla H2 concept をピットに戻す。
「昨日の予選もそうでしたが、ST-4 クラスに混ざれるようになってきたのが手ごたえですね」と佐々木は第1スティントを振り返った。「重いクルマですが、登りが多いSUGO で運動性能をみせることができましたし、初めてこのSUGO で音や速さ、そしてST-4 と戦うシーンをみせられたことがすごく嬉しかったですね」
そんな佐々木からステアリングを受け取ったのはモリゾウだ。まずは給水素を終えコースインすると、1分41 秒〜42 秒台の極めて安定したラップタイムでコンスタントに周回。もちろんこれまで同様アクシデント等もなかったが、49 周を終えピットインすると、このレース唯一とも言える作業が行われた。リヤハッチを留めているピンがゆるんでしまったことがあり、3分ほどをかけて修復。ただ作業はきっちりと終わり、給水素を行った後、連続スティントに臨んでいった。モリゾウは63 周まで安定したスティントをこなしピットインすると、チェッカードライバーとなる小倉にステアリングを託した。
「週末、ずっと天候が悪かったのですが、ORC ROOKIE Corolla H2 concept がドライでどこまで走ることができるのかを、今日ようやく確認できました。まず第一印象としては、乗りやすいということです」という小倉は、79周を終え一度給水素をこなし、ふたたびコースへ向かった。「おそらく皆さんが観ているよりもパワーがある感触があるクルマなんです。水素だからどうか……という感じではないんです。今後さらに上のクラスとも争えるようになると、もっと皆さんに興味をもってもらえるのかもしれませんね。ひとりのクルマ好きとして興味があります」と小倉。
ORC ROOKIE Corolla H2 concept は3時間のレースで給水素6回、3人がきっちりと任務をこなし、90 周を走りきり東北のファンに1年の進化をみせた。そして地元でのレースを終え、笑顔で小倉とともに表彰台に立った佐々木は、きっちり完走を果たし、また速さをみせることができたレースを終え、
「今後、液体水素に対する期待感も高まりますね。いまはST-4 のライバルたちも観ている皆さんも、一度抜かれてもすぐこちらが給水素に入るだろうと思っているはずですが、もっとバトルをして、レースとして成り立つように絶対になってくる。いまはそのために速さを身につけ、それを見せられることができました」と今回のレースは今後に繋がるものだと説明した。
「小倉選手も、もちろんモリゾウ選手も毎年速さの面でも進化している。50 歳を越えてからまだまだスピードを上げているので、年齢を重ねてモータースポーツを始めたい人たちにも、ぜひ僕たちのレースを今後も観ていて欲しいですね」
2022 年第3戦菅生 リザルト
2022 年第3戦菅生 データ
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